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2018年09月28日 [サービス概要]

養育費の一括支払いと贈与税 民事信託の活用法

> 1 離婚の際、夫婦の間に未成年の子供がいれば、養育費についても協議することになります。
> この時、仮に子供一人につき、1ヶ月3万円を支払うという合意が成立しそうだとしても、親権者となる側にとっては、「将来にわたりきちんと養育費を支払ってくれるだろうか」という不安はどうしても生じます。さらには義務者(養育費を負担する側)にまとまった資産があるような場合、権利者(親権者となる側。養育費を請求する側)とすれば、出来れば一括で支払って欲しいと思われるでしょう。
> 他方、義務者側にとっても、出来ればまとまった資産がある今のうちに、一括で支払っておきたいという事情がある場合もあるわけです。
> 2 このような養育費一括払いにおいて最も問題となるのが贈与税の問題です。どういうことかというと、国税庁HPに「贈与税がかからない場合」として、扶養義務者からの生活費や教育費についての記載があります(国税庁タックスアンサー4405)。 (https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4405.htm
>   どういう記載かというと以下の通りです。
贈与税がかからない場合
> 2夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの
> ここでいう生活費は、その人にとって通常の日常生活に必要な費用をいい、また、教育費とは、学費や教材費、文具費などをいいます。
> ?なお、贈与税がかからない財産は、生活費や教育費として必要な都度直接これらに充てるためのものに限られます。したがって、生活費や教育費の名目で贈与を受けた場合であっても、それを預金したり株式や不動産などの買入資金に充てている場合には贈与税がかかることになります。
> そうすると、常識的に考えて数百万円からのお金は「生活費や教育費として必要な都度直接これ らに充てるためのもの」とはとても評価できないため、贈与税の対象になるというわけです。したがって、何の手立てもなく「今後の養育費ね」ということでポンとお金を渡しても、贈与税の支払いをしなけらばならないと言うことになるわけです。
> 3 そこで、一括払いを受け入れながら、贈与税がかからないとされる「生活費や教育費として必要な都度直接これらに充てるためのもの」という条件をクリアするために考えられている手法が 信託法に基づく民事信託契約のひとつである養育信託と言う手法になります。この養育信託を簡単に言うと養育費支払義務者は、受託者として養育費総額を一括で受託者(=親権者)に渡し、受託者が毎月の養育費を権利者(子供)側に渡す」というものです。そして受託者には相当の倫理性が求められます。このお金を私用で使い込みするなどはもってのほかです。そして、もしこれを悪用したりすると税法では贈与税+重加算税の賦課、刑事的には横領罪となることになります。そしてそもそも、この養育信託契約締結については権利義務関係の明確化等のために公正証書にすることも必須ではないかと思っています。そういう意味ではアドバイスする専門家の倫理性も求められます。
> 4 この養育信託については、信託物の保管という関係では信託銀行が望ましいのですが、他方、信託銀行では教育資金信託と言う商品は盛んに取り扱っているわけですが、養育信託を扱ってい るところは聞いたことがありません。したがって現状ではご自分で養育信託を組成するしかない状況です。もともと離婚するご夫婦の経済状況やお子様の状況が一つとして同じことはあり得ませんのでオーダーメイドで信託契約を組むしかないわけでよく考えると信託銀行向きではないの かもしれません。ところでこの養育信託についてはあまりポピュラーではないため税理士・弁護士によって取扱や対応もバラツキがみられるようなので、各所に相談されてみられることをお勧めします。
> 5 ちなみに3年程前にこの信託契約書を作成さしあげた方が先日別の相談で来られた際、この信託に関して「税務署から何かありましたか」と聞いたところ「何もなかった」との返答でした。

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